内容紹介
呼吸器疾患は感染症、腫瘍、アレルギー、間質性疾患、さらには合併症と多彩であり、幅広い知識と能力が求められる。したがってER医、研修医にはともすれば難解と思われ敬遠されがちであるが、外来診療で必要な範囲での基本的知識をていねいに要点を絞って解説したのが本書である。身体所見のとり方、 画像検査、生化学、生理、病理検査の読み方のポイント、主要疾患の概念から診断治療までの解説がわかりやすく、通読するだけで臨床への興味が倍増する1冊。とくに胸部X線が随所提示され、X線そのもの基本的な読み方から病態と結合した解読まで親切に述べられているので、読影が楽しくなる。研修医教育に定評のある施設ならではの行き届いた配慮がなされている。
目次
第1章 問診と診察-診療の質はFirstContactで決まる
A 問診のポイント1.発症時期から考えられること
2.既往歴から考えられること
3.家族歴から考えられること
4.生活歴から考えられること
B 身体所見のとり方
1.視診と触診における留意点
2.打診-異常所見としての濁音と鼓音
3.聴診-聴診で落せないこと
C 身体所見のとり方
1.咳嗽-やみくもな鎮咳剤投与はやめよう
2.喀痰の性状を肉眼的に観察しよう
3.呼吸困難の原因は多彩、発症様式と程度から考えよう
4.胸痛では重要な疾患をまず除外しよう
5.嗄声は必ずX線写真で確認しよう
第2章 検査-検査は焦点を絞って、所見は緻密に読もう
A 胸部X線検査のポイント
1.胸部単純X線写真-呼吸器内科の仕事は1枚の単純X線写真から
a.主病変の評価を行う前の全体的な着眼点
b.腫瘤影を見落とさない
c.シルエットサイン、無気肺
2.胸部CT検査-まずX線で異常を見つけ、精密検査としてCTを
a.肺胞性陰影
b.間質性陰影
c.留意点
B 血液生化学検査のポイント
a.末梢血白血球数、分画
b.CRP
c.蛋白分画
d.LDH
e.ALP
f.β-D-グルカン
g.CEA
h.KL-6、SP-D
C 喀痰検査のポイント
a.喀痰採取の注意
b.喀痰の肉眼的所見
c.喀痰グラム染色
d.喀痰培養検査
e.喀痰以外の細菌学的検査
そのほかの検査のポイント
a.動脈血ガス分析
b.パルスオキシメーターによる酸素飽和度測定
c.肺機能検査
第3章 呼吸器疾患の診断と治療-レジデントのゴールデンスタンダード
A 急性上気道炎1.普通感冒
2.急性喉頭炎、扁桃腺炎
3.急性喉頭蓋炎
4.インフルエンザ
B 肺結核症、肺非結核性抗酸菌症
1.肺結核症
a.結核菌検査
b.治療
2.肺非結核性抗酸菌症(肺非定型抗酸菌症)
a.診断基準
b.肺M.aviumcomplex症
c.肺M.kansasii症
d.その他の肺非結核性抗酸菌症の治療
C 肺炎
1.市中肺炎
a.原因微生物を検索する必要があるか
b.起炎微生物
c.細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別
d.胸部X線写真で肺炎の原因菌を推定できるか
e.治療
2.誤嚥性肺炎
a.誤嚥の原因
b.原因菌
c.治療
D 肺膿瘍
E 気管支喘息
1.診断
2.慢性期の治療
3.発作時の治療
a.家庭での対応
b.救急外来での治療
F 慢性閉塞性肺疾患
1.診断
2.安定期の治療
3.急性増悪時の治療
G 肺癌
1.診断
a.自覚症状
b.胸部X線写真でのポイント
c.組織型診断
2.病期決定
3.治療
a.手術療法
b.放射線療法
c.化学療法
4.特殊型の治療
a.癌性胸膜炎
b.上大静脈症候群
c.Pancoast腫瘍
d.癌性心膜炎
e.癌性髄膜炎
H 肺血栓塞栓症
1.診断
a.症状
b.検査所見
2.治療
I 胸膜炎
1.胸水貯留
a.胸水検査
b.胸水の性状と疾患
c.胸水細胞分画と疾患
2.頻度の高い胸膜炎
a.細菌性胸膜炎、膿胸
b.結核性胸膜炎
c.癌性胸膜炎
d.悪性中皮腫
J 間質性肺炎
1.診断
2.特発性間質性肺炎の薬物治療
a.特発性肺線維症の薬物治療
b.非特異性間質性肺炎の薬物治療
3.症例
K 急性呼吸促迫症候群、急性肺障害
1.定義
2.治療
L 睡眠時無呼吸症候群
1.閉塞性無呼吸症候群の診断
2.閉塞性無呼吸症候群の治療
M 自然気胸
1.診断
2.治療
3.特殊な気胸
a.血気胸
b.緊張性気胸
c.月経随伴性気胸
4.再膨張性肺水腫