内容紹介
目次
はじめに
第1章 認知症高齢者に対する処遇対策の経緯
Ⅰ.認知症高齢者への処遇対策の経緯(2000年前まで)
1. 高齢者問題(認知症を含む)の起こりはじめ:1970(昭和45)年
2. 高齢者問題(認知症を含む)の社会問題化:1980(昭和55)年ごろから
3.認知症高齢者への対策の制度化(策定と施行)
4. 社会情勢の変化による認知症高齢者処遇(理念と実情)の施策の変遷
1)保健・福祉に関するもの
2)医学・医療に関するもの
Ⅱ.認知症高齢者への処遇対策の経緯(2000年以後)
1.平成12(2000)年
2.平成14(2002)年
3.平成15(2003)年
4.平成17(2005)年
1)認知症を知り,地域をつくる10 年
2)認知症高齢者の地域での生活支援
5.平成18(2006)年
第2章 認知症を示す疾患について
Ⅰ.概 略
1.老化性認知症疾患
1)アルツハイマー型認知症
2)血管性認知症
2.その他の認知症を示す脳疾患
1)いわゆる“非アルツハイマー型変性認知症”
a)記憶障害
b)思考障害
c)知的能力の喪失
d)感情障害
e)人格障害
f)その他
2) その他,非特異性脳障害:頭部外傷や硬膜下血腫,脳や全身性の代謝疾患など
a)うつ状態
b)妄想状態
c)幻覚の目立つ状態
3) はじめは脳器質性精神症候群を示しながら認知症化する一群の特徴
Ⅱ.各種の主な疾患について
1. 老年性アルツハイマー病(アルツハイマー型老年認知症)
1)症状の経過
a)初期:数か月~1年
b)前期:1~2,3年
c)中期(前半):2~数年,認知症が中等度(その前半)
d) 中期(後半):1~2,3年,認知症が中等度の重めから重度化
e)後期:1~2年,重度認知症から最重度化
f)治 療
2. 若年性アルツハイマー病 (初老期アルツハイマー病)
1)前 期
2)中 期
3)後 期
3.前頭側頭型認知症(ピック病)
1)前 期
2)中 期
3)後 期
4.脳血管性障害の一般的な概略
1)脳卒中の基本型の経過について
a)急 性 期
b)亜急性期
c)亜慢性期
d)慢 性 期
2)意識障害について
a)意識障害に関係する精神的要因
b)せん妄にある精神的要因
3)血管性認知症とその周辺症状群について
a)脳血管障害の通過症状群
b)仮性球麻痺(pseudobulbar palsy)
c)まだら認知症(lacunar dementia)
4)知的実行能力と自覚の障害
a)脳局所症状としての一般的な知的実行能力の障害
b)血管性認知症の知的実行能力の障害の特徴
c) 血管性認知症の知的人格の変化:“人格の芯が保たれている”とは
d)反省能力(内省・熟慮)の障害:知的自覚のなさ
e)血管性認知症の特徴
5)血管性認知症の白質病変について(付記)
a)ビンスワンガー脳症(Binswanger’s encephalopathy)
5.超高齢期発症の認知症について
1)事例の臨床
2)超高齢期発症の認知症の考察(まとめ)
a)超高齢期認知症の発症の年齢の問題点
b)人柄の特徴の保持と,その重度化による変遷
c)健忘型認知症としての経過の特徴
d)超高齢期発症の認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)の特徴
e)超高齢期発症の認知症者への対応の留意点
f) 超高齢期発症の認知症の臨床像のまとめ(5事例について)
6.認知症の重度化の様相について
1)認知症高齢者の重度化する日常生活の有り様
a)人格像の衰退化する型
b)人格像の解体化する型
2)事例の臨床
3)認知症の重度化:とくに人形現象について
a)事例の臨床
b)人形現象の成因
第3章 認知症高齢者とのコミュニケーション
Ⅰ.コミュニケーションの一般的原則
1.高齢者への態度
2.話し方の注意事項
3.対談で聴く内容の留意事項
Ⅱ.認知症高齢者との対話の留意事項
1.対話の目標
2. 対話の内容とその意義
1)名 前
2) 年 齢
3) 生年月日
4) もの忘れの自覚の有無
5) 今日,いまの日時
6) 経過時間の把握やその意義の自覚
7)場 所
a) 自 宅
b) 施設・病院
8) 状 況
9)家 族
a)子ども
b)配偶者
c)父 母
10) 仕事,職業
11)昔の体験
12) 計 算
13)概念の相違
14) 特技,趣味,娯楽
15) 健 康
16) 未 来
Ⅲ.施設生活にみる認知症高齢者の人間関係
1.孤独な認知症高齢者
1)独自の言動で振る舞う人
a) 動かず(座りきりや寝たきり),孤独でなにもできず,しかし人を求めて連呼する人
b)動いて,要求・訴え・確認の常同的な反復をする人
c)被害的,とくに“物盗られ妄想”の強い人
d) 抑制欠如(感情・行動的な抑えが利かない)で,自分本
位に暮らす人
2)諦観的に頼る人もなく,引きこもりがちになる人
3)認知症が重度化して,呆然自失となる人
2.男性高齢者の人間関係のあり方
1)男性高齢者同士の結びつき
2)男性と女性の高齢者の近づき
3.女性高齢者同士の結びつき
1)依存して共存し生活するのに必要な人
2)安心して共にいて話し楽しめる身近な高齢者仲間の人
3)人物誤認(既知化)による,身近・身内化のなじみの人
4.施設における認知症高齢者の人間関係を基にした対応
1)まだ互いに交流可能な認知症高齢者
a)ペアの形成(相手づくり)
b)同類の仲間の小グループ形成
c) やや性格の異なった上記の小グループの合併した中グループの活用
2)交流困難で大幅な指導や介護を必要とする認知症高齢者
3)従来の施設の実態と実情
a)ユニットケア
b)グループホーム
5.今後の高齢者の生活における人間関係の時代的変化
Ⅳ.認知症高齢者の精神世界
1.認知症の見当識の問題:とくに失見当と誤見当について
1)失 見 当
a)“現在の”自分の把握の障害
b)現在の“自分の”把握の障害
2)誤見当(false orientation)
2.現実見当づけと仮想性見当づけについて
1)現実見当づけ(reality orientation:RO)
2)仮想性見当づけ(virtual orientation)
3.認知症における虚構化と現実化の精神世界
1) 最初は老年期精神障害による現実不安から認知症化するもの
2) 健忘型認知症が進む過程で過去化した生活や仕事をしているつもりの仮性行為(仮想性現実化症候群)
a)過去化した錯誤思考による生活や仕事の行動化するもの
b) 逆向性に過去化する錯誤思考の生活の考えが内蔵化するもの
4.認知症高齢者の年齢の若返り
1)年齢の若返りの意義
a)現在の自分の年齢の自覚は,自我意識のあるところ
b)自分の過去の生活史の時代づけ
2)年齢の若返りに関与する要因
3)年齢の若返りの実際の検討
第4章 認知症高齢者への“理にかなったメンタルケア”
Ⅰ.理にかなったメンタルケアの理念
1.健忘型認知症の症状の意義
1)わからなくなる
a)高齢者は急激な変化に弱い
b)変化するものほど忘れやすい
c)変化しないものは忘れにくい
d)前後の比較ができなくなる
e)意味がわからなくなる
2)できなくなる
3)忘 れ る
a)失 見 当
b)逆向性生活史健忘
c)誤 見 当
d)自覚がなくなる,頼りなくなる
2.老年期の喪失体験とそれによる生きる不安(存在不安)の意義
3.認知症に伴う行動・心理症状の成因とそれによる対応の意義
Ⅱ. 認知症高齢者へのメンタルケアの原則:とくに老年性アルツハイマー病について
1. 認知症高齢者の態度や言動を受容して理解すること
1)受容,共感,共存のメンタルケア
2)非言語的コミュニケーションの重視
3)認知症高齢者の「感じ」の受けとめ方
4)認知症高齢者の「思い」の考え方
2.なじみのよい人間関係をつくること
1)なじみの結びつきの状況
2)なじみの人間関係の意義
3)なじみの人間関係の形態の時代的変遷
a) 大正時代まで(1925)に生まれた(2005年で80歳以上の)高齢者
b) 昭和生まれ(1926年以後)の戦前派(アヴァンゲール)の高齢者
c)団塊の世代の人
d) 高齢者の心(精神世界)を知り,その思い(感情),考え(思考)にそって対応する
3. 認知症高齢者の心のペース(とくに思い:感情)に合わせること
1)身近な人とのなじみの人間関係
2) 身内とくに家族的な親身の情愛(親しい深い思いやりの気持ちの結びつき)の残存
3)感情的付加のかかった記憶の存続
4.理屈による説得よりも心でわかる共感的な納得を図ること
1)理屈が通じにくい
a)心情的な納得を図る
b)行動を共にして納得を図る
c)まちがいは許容して,自分なりの生き方を図る
5. よい刺激をたえず与える,ふさわしい状況で隠れた能力を発揮させる:よい刺激の働きかけで心身の活性化と,
その人らしい生き方を図る
a . 手続き記憶の意義とその利用
1)職業症候群
a)せん妄(職業性せん妄)
b)仮性行為(仮想性職業症候群)
2)潜在能力(特技的能力)として発揮
3) 得意な趣味的能力として,レクリエーションやリハビリテーションに利用
4)その人らしさの回復(自信,自覚)
5)交流や生き方の拠り所(話題,物語)
6. 認知症高齢者を孤独にしない,安易に寝たきりにしない:生きる環境を整える
1)孤独に放置しない
2)安易に寝込ませない
7. 急激な環境の変化を避ける:認知症をもちながらの生き方の適応を図る
1)環境や処遇の変化
2)記憶の学習の教え方
8. いまを大切にして安心・安住の暮らしを図る:安心して生活している実感を(現在)
9. 生きがいや自分らしさを少しでも保った生き方を図る:自分なりの生き方を(過去)
10. 近親者との“情愛の絆”を保つこと:身近な人との情愛の結びつきをもった生きがい(未来)
11.認知症高齢者のケアのガイドライン
1)初期障害
2)軽度障害
3)中等度障害(前半)
4)中等度障害(後半)
5)重度障害
Ⅲ.血管性認知症に対するメンタルケア
1.自分本位の独自の態度や言動を示す
2. 情意の自己のコントロールが困難で感情的に過度の行動化をしやすい
3.精神状態が変化しやすい(不安定,浮動,極端化)
4.その人なりの理由や理屈がある
5. 意識障害がらみの異質化:精神内容や言動が,理解困難な飛躍や非現実化
6.人に対する構え(自主的な対人態度)がある
7.注意,関心の集中,持続を日常生活の介護では留意する
8.まだら認知症による言動の表出の障害を援助する
9. 心身の生きる働きを回復・維持するリハビリテーションの必要
10.心身共に廃用性症候群の傾向が強い
第5章 認知症の行動・心理症状の発症要因とその対応
Ⅰ.行動・心理症状(BPSD)の成り立ちの概略
1. BPSD の発現場所の問題について
2. 認知症の時期や重さによるBPSDの種類について
1)前期前半の軽度認知症の時期
2) 前期後半から中期前半にわたっての中等度の軽めの認知症の時期
3) 中期後半の中等度の重めの認知症から後期の重度認知症の時期
4)認知症が重度の後期
3.BPSDの成り立ちについて
1)BPSDの脳因性要因
a)意識障害
b)知的機能障害
c)感情や欲動の発動性の障害
d)日内リズムの変調
e)脳因性(とくに活動性)のBPSDの特徴
2)BPSDに関与する状況因性要因
a)身近な人との人間関係
b)処遇状況への不適応
c)認知症の勘違い言動(仮想性現実化症候群)
d)無自覚さ
3)BPSDの発症の精神的要因
a)孤 独
b)不 安
c)脱抑制症状
d)自覚のなさ
Ⅱ.BPSDへの対応:とくにメンタルケアを中心にして
1.徘徊の成因と対応
1)処遇環境への不適応による徘徊
2)状況がわからない失見当による徘徊
3)勘違い(誤認)による徘徊
4)不安・不満・不信による徘徊
5)幻覚妄想や錯乱性の激しい不安での徘徊
6)欲動性や衝動性で抑えのきかない脳因性の徘徊
a)若年性アルツハイマー病
b)前頭側頭型認知症(ピック病)
2.物盗られ妄想の成り立ちと対応
3. 認知症による仮想性現実化症候群(virtual realization syndrom)への対応
4.拒否・反抗行動の成り立ちと対応
1)食事介助への拒否・反抗について
2)入浴の拒否や回避の成り立ちと対応
3)介助行為への乱暴な反抗への対応
5. 要求(帰宅,電話,お金や食事の確認,心身不調の訴え)の常同的反復への対応
6.大声・叫びの連呼への対応
1)疎通困難で孤独のときの独自の喚声の反復
2)運動性失語症の残語の「おーい! おーい!」などの反復
3) 寝たきりや視覚障害で「だれかきて!」「おしっこ!」の呼び声やコールベル押しの反復
7.性的や色情的行為への対応
1)施設の集まりでできた男女の高齢者の仲良し関係
2) 若い女性介護者が抑制を欠いた血管性認知症の男性高齢者に密接な介助をしている場合
3) 抑制欠如の軽・中等度の血管性認知症の男性高齢者が重度の老年性アルツハイマー病の女性高齢者への
執拗な性的行為を示す場合
4)脳因性の欲動性脱抑制の色情的行為の激しい場合
8.乱暴・暴言への対応
9.せん妄に対するケア
Ⅲ.認知症に伴うBPSDに対する薬物治療
1.不安,興奮,妄想幻覚の薬物治療
2.うつ状態の薬物治療
3.せん妄の薬物治療
4.不眠症の薬物治療
あとがきにかえて:私の50数年の精神科歴の回顧
1.精神医療の目指した治癒像の理念の変遷
2.認知症高齢者への目指すケアの理念の変遷
3.認知症高齢者へのメンタルケアの重視
索 引
第1章 認知症高齢者に対する処遇対策の経緯
Ⅰ.認知症高齢者への処遇対策の経緯(2000年前まで)
1. 高齢者問題(認知症を含む)の起こりはじめ:1970(昭和45)年
2. 高齢者問題(認知症を含む)の社会問題化:1980(昭和55)年ごろから
3.認知症高齢者への対策の制度化(策定と施行)
4. 社会情勢の変化による認知症高齢者処遇(理念と実情)の施策の変遷
1)保健・福祉に関するもの
2)医学・医療に関するもの
Ⅱ.認知症高齢者への処遇対策の経緯(2000年以後)
1.平成12(2000)年
2.平成14(2002)年
3.平成15(2003)年
4.平成17(2005)年
1)認知症を知り,地域をつくる10 年
2)認知症高齢者の地域での生活支援
5.平成18(2006)年
第2章 認知症を示す疾患について
Ⅰ.概 略
1.老化性認知症疾患
1)アルツハイマー型認知症
2)血管性認知症
2.その他の認知症を示す脳疾患
1)いわゆる“非アルツハイマー型変性認知症”
a)記憶障害
b)思考障害
c)知的能力の喪失
d)感情障害
e)人格障害
f)その他
2) その他,非特異性脳障害:頭部外傷や硬膜下血腫,脳や全身性の代謝疾患など
a)うつ状態
b)妄想状態
c)幻覚の目立つ状態
3) はじめは脳器質性精神症候群を示しながら認知症化する一群の特徴
Ⅱ.各種の主な疾患について
1. 老年性アルツハイマー病(アルツハイマー型老年認知症)
1)症状の経過
a)初期:数か月~1年
b)前期:1~2,3年
c)中期(前半):2~数年,認知症が中等度(その前半)
d) 中期(後半):1~2,3年,認知症が中等度の重めから重度化
e)後期:1~2年,重度認知症から最重度化
f)治 療
2. 若年性アルツハイマー病 (初老期アルツハイマー病)
1)前 期
2)中 期
3)後 期
3.前頭側頭型認知症(ピック病)
1)前 期
2)中 期
3)後 期
4.脳血管性障害の一般的な概略
1)脳卒中の基本型の経過について
a)急 性 期
b)亜急性期
c)亜慢性期
d)慢 性 期
2)意識障害について
a)意識障害に関係する精神的要因
b)せん妄にある精神的要因
3)血管性認知症とその周辺症状群について
a)脳血管障害の通過症状群
b)仮性球麻痺(pseudobulbar palsy)
c)まだら認知症(lacunar dementia)
4)知的実行能力と自覚の障害
a)脳局所症状としての一般的な知的実行能力の障害
b)血管性認知症の知的実行能力の障害の特徴
c) 血管性認知症の知的人格の変化:“人格の芯が保たれている”とは
d)反省能力(内省・熟慮)の障害:知的自覚のなさ
e)血管性認知症の特徴
5)血管性認知症の白質病変について(付記)
a)ビンスワンガー脳症(Binswanger’s encephalopathy)
5.超高齢期発症の認知症について
1)事例の臨床
2)超高齢期発症の認知症の考察(まとめ)
a)超高齢期認知症の発症の年齢の問題点
b)人柄の特徴の保持と,その重度化による変遷
c)健忘型認知症としての経過の特徴
d)超高齢期発症の認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)の特徴
e)超高齢期発症の認知症者への対応の留意点
f) 超高齢期発症の認知症の臨床像のまとめ(5事例について)
6.認知症の重度化の様相について
1)認知症高齢者の重度化する日常生活の有り様
a)人格像の衰退化する型
b)人格像の解体化する型
2)事例の臨床
3)認知症の重度化:とくに人形現象について
a)事例の臨床
b)人形現象の成因
第3章 認知症高齢者とのコミュニケーション
Ⅰ.コミュニケーションの一般的原則
1.高齢者への態度
2.話し方の注意事項
3.対談で聴く内容の留意事項
Ⅱ.認知症高齢者との対話の留意事項
1.対話の目標
2. 対話の内容とその意義
1)名 前
2) 年 齢
3) 生年月日
4) もの忘れの自覚の有無
5) 今日,いまの日時
6) 経過時間の把握やその意義の自覚
7)場 所
a) 自 宅
b) 施設・病院
8) 状 況
9)家 族
a)子ども
b)配偶者
c)父 母
10) 仕事,職業
11)昔の体験
12) 計 算
13)概念の相違
14) 特技,趣味,娯楽
15) 健 康
16) 未 来
Ⅲ.施設生活にみる認知症高齢者の人間関係
1.孤独な認知症高齢者
1)独自の言動で振る舞う人
a) 動かず(座りきりや寝たきり),孤独でなにもできず,しかし人を求めて連呼する人
b)動いて,要求・訴え・確認の常同的な反復をする人
c)被害的,とくに“物盗られ妄想”の強い人
d) 抑制欠如(感情・行動的な抑えが利かない)で,自分本
位に暮らす人
2)諦観的に頼る人もなく,引きこもりがちになる人
3)認知症が重度化して,呆然自失となる人
2.男性高齢者の人間関係のあり方
1)男性高齢者同士の結びつき
2)男性と女性の高齢者の近づき
3.女性高齢者同士の結びつき
1)依存して共存し生活するのに必要な人
2)安心して共にいて話し楽しめる身近な高齢者仲間の人
3)人物誤認(既知化)による,身近・身内化のなじみの人
4.施設における認知症高齢者の人間関係を基にした対応
1)まだ互いに交流可能な認知症高齢者
a)ペアの形成(相手づくり)
b)同類の仲間の小グループ形成
c) やや性格の異なった上記の小グループの合併した中グループの活用
2)交流困難で大幅な指導や介護を必要とする認知症高齢者
3)従来の施設の実態と実情
a)ユニットケア
b)グループホーム
5.今後の高齢者の生活における人間関係の時代的変化
Ⅳ.認知症高齢者の精神世界
1.認知症の見当識の問題:とくに失見当と誤見当について
1)失 見 当
a)“現在の”自分の把握の障害
b)現在の“自分の”把握の障害
2)誤見当(false orientation)
2.現実見当づけと仮想性見当づけについて
1)現実見当づけ(reality orientation:RO)
2)仮想性見当づけ(virtual orientation)
3.認知症における虚構化と現実化の精神世界
1) 最初は老年期精神障害による現実不安から認知症化するもの
2) 健忘型認知症が進む過程で過去化した生活や仕事をしているつもりの仮性行為(仮想性現実化症候群)
a)過去化した錯誤思考による生活や仕事の行動化するもの
b) 逆向性に過去化する錯誤思考の生活の考えが内蔵化するもの
4.認知症高齢者の年齢の若返り
1)年齢の若返りの意義
a)現在の自分の年齢の自覚は,自我意識のあるところ
b)自分の過去の生活史の時代づけ
2)年齢の若返りに関与する要因
3)年齢の若返りの実際の検討
第4章 認知症高齢者への“理にかなったメンタルケア”
Ⅰ.理にかなったメンタルケアの理念
1.健忘型認知症の症状の意義
1)わからなくなる
a)高齢者は急激な変化に弱い
b)変化するものほど忘れやすい
c)変化しないものは忘れにくい
d)前後の比較ができなくなる
e)意味がわからなくなる
2)できなくなる
3)忘 れ る
a)失 見 当
b)逆向性生活史健忘
c)誤 見 当
d)自覚がなくなる,頼りなくなる
2.老年期の喪失体験とそれによる生きる不安(存在不安)の意義
3.認知症に伴う行動・心理症状の成因とそれによる対応の意義
Ⅱ. 認知症高齢者へのメンタルケアの原則:とくに老年性アルツハイマー病について
1. 認知症高齢者の態度や言動を受容して理解すること
1)受容,共感,共存のメンタルケア
2)非言語的コミュニケーションの重視
3)認知症高齢者の「感じ」の受けとめ方
4)認知症高齢者の「思い」の考え方
2.なじみのよい人間関係をつくること
1)なじみの結びつきの状況
2)なじみの人間関係の意義
3)なじみの人間関係の形態の時代的変遷
a) 大正時代まで(1925)に生まれた(2005年で80歳以上の)高齢者
b) 昭和生まれ(1926年以後)の戦前派(アヴァンゲール)の高齢者
c)団塊の世代の人
d) 高齢者の心(精神世界)を知り,その思い(感情),考え(思考)にそって対応する
3. 認知症高齢者の心のペース(とくに思い:感情)に合わせること
1)身近な人とのなじみの人間関係
2) 身内とくに家族的な親身の情愛(親しい深い思いやりの気持ちの結びつき)の残存
3)感情的付加のかかった記憶の存続
4.理屈による説得よりも心でわかる共感的な納得を図ること
1)理屈が通じにくい
a)心情的な納得を図る
b)行動を共にして納得を図る
c)まちがいは許容して,自分なりの生き方を図る
5. よい刺激をたえず与える,ふさわしい状況で隠れた能力を発揮させる:よい刺激の働きかけで心身の活性化と,
その人らしい生き方を図る
a . 手続き記憶の意義とその利用
1)職業症候群
a)せん妄(職業性せん妄)
b)仮性行為(仮想性職業症候群)
2)潜在能力(特技的能力)として発揮
3) 得意な趣味的能力として,レクリエーションやリハビリテーションに利用
4)その人らしさの回復(自信,自覚)
5)交流や生き方の拠り所(話題,物語)
6. 認知症高齢者を孤独にしない,安易に寝たきりにしない:生きる環境を整える
1)孤独に放置しない
2)安易に寝込ませない
7. 急激な環境の変化を避ける:認知症をもちながらの生き方の適応を図る
1)環境や処遇の変化
2)記憶の学習の教え方
8. いまを大切にして安心・安住の暮らしを図る:安心して生活している実感を(現在)
9. 生きがいや自分らしさを少しでも保った生き方を図る:自分なりの生き方を(過去)
10. 近親者との“情愛の絆”を保つこと:身近な人との情愛の結びつきをもった生きがい(未来)
11.認知症高齢者のケアのガイドライン
1)初期障害
2)軽度障害
3)中等度障害(前半)
4)中等度障害(後半)
5)重度障害
Ⅲ.血管性認知症に対するメンタルケア
1.自分本位の独自の態度や言動を示す
2. 情意の自己のコントロールが困難で感情的に過度の行動化をしやすい
3.精神状態が変化しやすい(不安定,浮動,極端化)
4.その人なりの理由や理屈がある
5. 意識障害がらみの異質化:精神内容や言動が,理解困難な飛躍や非現実化
6.人に対する構え(自主的な対人態度)がある
7.注意,関心の集中,持続を日常生活の介護では留意する
8.まだら認知症による言動の表出の障害を援助する
9. 心身の生きる働きを回復・維持するリハビリテーションの必要
10.心身共に廃用性症候群の傾向が強い
第5章 認知症の行動・心理症状の発症要因とその対応
Ⅰ.行動・心理症状(BPSD)の成り立ちの概略
1. BPSD の発現場所の問題について
2. 認知症の時期や重さによるBPSDの種類について
1)前期前半の軽度認知症の時期
2) 前期後半から中期前半にわたっての中等度の軽めの認知症の時期
3) 中期後半の中等度の重めの認知症から後期の重度認知症の時期
4)認知症が重度の後期
3.BPSDの成り立ちについて
1)BPSDの脳因性要因
a)意識障害
b)知的機能障害
c)感情や欲動の発動性の障害
d)日内リズムの変調
e)脳因性(とくに活動性)のBPSDの特徴
2)BPSDに関与する状況因性要因
a)身近な人との人間関係
b)処遇状況への不適応
c)認知症の勘違い言動(仮想性現実化症候群)
d)無自覚さ
3)BPSDの発症の精神的要因
a)孤 独
b)不 安
c)脱抑制症状
d)自覚のなさ
Ⅱ.BPSDへの対応:とくにメンタルケアを中心にして
1.徘徊の成因と対応
1)処遇環境への不適応による徘徊
2)状況がわからない失見当による徘徊
3)勘違い(誤認)による徘徊
4)不安・不満・不信による徘徊
5)幻覚妄想や錯乱性の激しい不安での徘徊
6)欲動性や衝動性で抑えのきかない脳因性の徘徊
a)若年性アルツハイマー病
b)前頭側頭型認知症(ピック病)
2.物盗られ妄想の成り立ちと対応
3. 認知症による仮想性現実化症候群(virtual realization syndrom)への対応
4.拒否・反抗行動の成り立ちと対応
1)食事介助への拒否・反抗について
2)入浴の拒否や回避の成り立ちと対応
3)介助行為への乱暴な反抗への対応
5. 要求(帰宅,電話,お金や食事の確認,心身不調の訴え)の常同的反復への対応
6.大声・叫びの連呼への対応
1)疎通困難で孤独のときの独自の喚声の反復
2)運動性失語症の残語の「おーい! おーい!」などの反復
3) 寝たきりや視覚障害で「だれかきて!」「おしっこ!」の呼び声やコールベル押しの反復
7.性的や色情的行為への対応
1)施設の集まりでできた男女の高齢者の仲良し関係
2) 若い女性介護者が抑制を欠いた血管性認知症の男性高齢者に密接な介助をしている場合
3) 抑制欠如の軽・中等度の血管性認知症の男性高齢者が重度の老年性アルツハイマー病の女性高齢者への
執拗な性的行為を示す場合
4)脳因性の欲動性脱抑制の色情的行為の激しい場合
8.乱暴・暴言への対応
9.せん妄に対するケア
Ⅲ.認知症に伴うBPSDに対する薬物治療
1.不安,興奮,妄想幻覚の薬物治療
2.うつ状態の薬物治療
3.せん妄の薬物治療
4.不眠症の薬物治療
あとがきにかえて:私の50数年の精神科歴の回顧
1.精神医療の目指した治癒像の理念の変遷
2.認知症高齢者への目指すケアの理念の変遷
3.認知症高齢者へのメンタルケアの重視
索 引
本書は認知症研究の第一人者である著者がその57年に及び経験を基にさまざまな認知症に対する対応を解き明かした一冊である.